弁膜症② ~高齢化とともに増える大動脈弁狭窄症~

弁膜症前回、心雑音で早期に気づく弁膜症に関して概説させていただきました。今回は、弁膜症の中でも高齢化とともに増加している『大動脈弁狭窄症』に関してお話させてただきたいと思います。

この病気は、心臓の出口に当たる大動脈弁という蓋が、加齢による変性などで狭くなる病気です。

血液を送り出すポンプである心臓の出口が狭くなると、狭い出口に無理やり押し出された血液は、水道のホースを潰して水を遠くまで飛ばすように、勢いよく強い圧力で出ていくようになります。

その際に、雑音が発生し、勢いのある血液は大動脈に負担を与え、さらに狭い出口に無理やり血液を押し出している心臓には圧力の負担がかかり、心臓の筋肉が肥大し、心肥大が起こります。

すると、肥大した心臓の筋肉は力はあっても固くなってしまい、柔軟に拡張できなくなります。これを拡張障害といい、血液が十分に心臓に入れなくなるため、血液が鬱滞し、心不全となります。

大動脈弁狭窄症では、有名な3大症状があります。1.胸痛、2.失神、3.心不全(呼吸苦)です。血液が出ていけないことで、心臓自身にも栄養が回らなくなり、さらに肥大した筋肉は栄養が足りず、狭心症のような胸痛が出ます。

そしてさらに送り出す血液が足りなくなれば、脳への血流が低下して、失神します。そして、送り出せないだけでなく、肥大して拡張できなくなった心臓では、血液が鬱滞し、心不全となります。

これらの症状が出ると、急激に生命予後が悪くなり、胸痛では余命45ヶ月、失神では27ヶ月、心不全では11ヶ月と言われています。次回、新しく変わってきた大動脈弁狭窄症の治療に関してお話したいと思います。