心不全地域連携② ~上越の心不全患者を守る~

心不全地域連携前回、高齢化に伴う心不全患者さんの増加により、心不全患者さんを診きれなくなってきているというお話をしました。

そして、その状況を打開するために「上越地域心不全連携パス」システムを立ち上げたことをご紹介しました。

このシステムは「連携パス」という、いわゆる個人の病歴の手帳を作るものです。その手帳には診療に必要な全ての情報が記されていて、患者さんにその手帳を常に持ち歩いてもらうことによって、普段の診療だけでなく、救急搬送されたりした場合でもすぐに病歴が把握できることを目指したシステムです。

日常の診療は、県立中央病院、上越総合病院の2病院の循環器専門医が、半年に1回の診察を行うことで心不全の状態をコントロール。普段の1か月に1回の診察や投薬は、地域の開業医・クリニックのかかりつけ医にお任せします。

その際に、毎回煩雑な診療情報の手紙をやり取りしなくとも、連携パスを見ることによって容易に病状を把握できるようにしました。そして、連携パスには、毎日の患者さんの血圧、体重、むくみ、服薬状況などの生活上の状況も記載するようになっています。

また訪問看護、介護、訪問薬剤指導、リハビリなどの在宅で活躍する地域の他の職種の方々とも連携。日常の自宅での状況を記載していただいて、それを把握することができるようにしました。

これにより、専門医、かかりつけ医、在宅看護・介護など多数の職種の目が介入します。患者さんの状況をより詳細に把握できるため、心不全の悪化に早期に気づき、防ぐことができるようになります。心不全に関することは、いつでもご相談ください。

心不全地域連携① ~上越地域の心不全患者さんを守る~

心不全地域連携今回は、高齢化に伴い増加の一途を辿っている心不全患者さんを診察していく上での上越地域の心不全の地域連携システムに関してお話ししたいと思います。

現在、高齢人口の増加により、確実に心不全患者さんが増えてきています。80歳以上では約10%が心不全を発症すると言われており、上越地域も例外なく高齢化が進み、総合病院における心不全患者様の入院がどんどん増えております。

そのため、病床不足が起こり、そして退院後も外来での心不全患者さんのコントロールをしていくことが専門医だけでは診切れない状況となり、病状のコントロールが悪化し、すぐに再入院を繰り返してしまうことが増えています。

その悪循環を断ち切るために立ち上げたのが『上越地域心不全連携パス』です。

詳細は、次回お伝えさせていただきますが、上越総合病院、県立中央病院の2病院が中心となり、地域の開業医の先生方、地域の訪問看護師、介護事業の方々とも連携し、心不全の患者さんの状態を診療所、在宅で細やかに把握し管理することで、状態が悪化することを未然に防ぎ、入院する状態になる前に受診し手を打つことを目標としたシステムになっています。

我々、循環器医は増加する心不全患者さんを、いかに悪化・入院させず、元気な状態で維持できるかを常に考えて診療しています。困ったときはご相談下さい。

心臓カテーテル検査 ~狭心症、心筋梗塞を低侵襲に治療する~

心臓カテーテル検査今回は循環器治療の中心である、狭心症や心筋梗塞の診断、治療に欠かせない検査、心臓カテーテル検査・治療に関してお話ししたいと思います。

心臓カテーテル治療は1977年にスイスの医師グルンチッヒ(Dr. Andreas R.Gruzig )が初めてバルーン(風船)で血管を膨らませたことに始まり、それから急速に発展・普及し、現代では非常に安全性の高い標準化された治療となっております。

血管に入れるカテーテルの管は2mm程度まで細くなり、ほとんどの場合、手首の血管から局所麻酔のみで入れていく(血管の中は痛みを感じないため、血管を刺す部分のみ麻酔するだけでOK)低侵襲な治療となっています。

現代のカテーテル治療では、狭くなった血管をバルーンで膨らませて拡張するだけでなく、『薬剤溶出ステント』と言われる金属の網目状の筒を狭くなった血管の中に拡げて留置し、狭くなった血管を治すことが主流になっています。

バルーンで拡張するだけの時代は、一度拡げても再び狭くなってしまう再狭窄が30-50%程度ありましたが、薬剤溶出ステント治療の現代では、再狭窄率は3-7%と相当に減少しています。

現代では非常に安全に、低侵襲に血管を治療することが可能となってきており、我々、クリニックの窓口から早期発見し、必要に応じて積極的に検査を受けていただくことをお勧めしております。いつでもご相談下さい。

糖尿病 ~循環器医の視点から~

糖尿病糖尿病は一度は耳にしたことがある方が多いのではないでしょうか?

国民健康・栄養調査によると、糖尿病が疑われる人が1000万人、糖尿病を患っている人が1000万人と、20歳以上の成人人口の約2割が糖尿病の可能性があると言われています。

糖尿病は痛くも痒くもありません。ですが、確実に水面下で体を蝕んでいきます。気付かないから放置してしまう。そして、気づいた時には遅いのです。

なぜ遅いのか?糖尿病は水面下で体の各臓器を蝕み、症状が出る頃には、その臓器は相当に傷んでいます。

糖尿病は微小血管障害と言われる、網膜症(失明、視野障害を起こす)、神経症(手足のしびれなどが続く)、腎症(腎不全から透析になる)、そして、大血管障害と言われる脳梗塞(麻痺が残る)、心筋梗塞(心不全となり息切れを起こす、突然の生命の危機)を引き起こします。

これらになってから糖尿病の治療をしても、もはや、痛めてしまった臓器は元には戻りません。

特に我々、心臓の分野では、国立循環器病センターのデータでは、狭心症・心筋梗塞で入院した患者さんの4人に3人は糖尿病(耐糖能異常)であったとのデータもあり、日々、そのような糖尿病によって心筋梗塞になってしまった患者さんを見ながら、こうなるもっと何年も前に糖尿病の治療をしていたら、この患者さんはきっと今頃、元気に過ごしていたのにと悔しい思いをすることも多々あります。

そのような患者さんを一人でも減らすためにも糖尿病の早期発見・早期治療に努めています。健康診断で糖尿病を指摘された時は放置せず、是非、早めに相談してください。

発作性心房細動 ~いかにして動悸を起こす犯人を捕まえるか~

発作性心房細動今回は、以前もお話しした不整脈の一つ『心房細動』に関してのお話しです。

心房細動は、心臓内に血栓ができ、それが流れて脳の血管に詰まることにより脳梗塞を起こします。

巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄監督が、この心房細動による脳梗塞で重度の麻痺が残り、後遺症に苦しみました。

そのため、心房細動においては、いかに早く発見して脳梗塞を防ぐかが重要になります。

心房細動は、発症初期の頃は発作性心房細動と呼ばれ、頻度も低く短時間しか発作を起こさないため、気付きにくく発見が困難です。

普段は全く正常な脈であり、ある時突然、脈拍が120-140/分と速くなり強い動悸を感じますが、持続時間は数分間、初期には多くは数時間以内に自然に停止し、正常な脈に戻ります。

そのため、患者様はしばしば急に動悸が起きて胸が苦しくなったと来院されますが、来院された時には自然停止して元に戻っていることが多く、心電図などの検査をしても正常な脈であり、問題ないですと言われて診察が終わってしまいます。

後日、24時間装着するHolter心電図などを行うこともありますが、月に数回しか動悸発作が起きない人では、24時間心電図を記録しても、装着している日には何も起きずに検査は異常なしとなってしまうことも多いのです。

つまり、発作性心房細動は最初は隠れた不整脈であり、いかにして犯人のしっぽを捕まえるか、それこそが大変なのです。

我々、循環器医も初期には心房細動という犯人を捕まえられず、悔しい思いをすることも多々ありました。

ですが、近年、医療以外の分野からも腕時計型の心電計など新たな道具が開発され注目され始めています。

まだまだ開発段階ですが、我々も日々、そのような機械の発達に助けられながら、より良い医療を提供できるように変化していければと願っています。