弁膜症③ ~心雑音の代表 僧帽弁閉鎖不全症~

弁膜症前回、高齢の心雑音の代表『大動脈弁狭窄症』についてお話させていただきました。

今回は心雑音で見つかるもう一つの代表的な弁膜症『僧帽弁閉鎖不全症』に関してお話させていただきたいと思います。

肺で酸素を取り込んだ血液は、まずは心臓の中の『心房』というお部屋に入ります。その後、血液は『心房』から『心室』へと流れ、『心室』は強く収縮して全身へと血液を送り出します。

僧帽弁とは、この『心房』と『心室』の間についている蓋であり、血液が心房から心室に流れる時に開き、心室から全身へと押し出されるときには、心房へ逆流して血液が戻ってしまわないように閉じる仕組みになっています。

この蓋が壊れてしまうと、心室から心房へ血液が逆流してしまい、心臓の中で徐々に血液がうっ滞します。

すると心臓が膨らみ、心拡大を起こし、進行して『心不全』に至ります。僧帽弁閉鎖不全は年単位でゆっくりと進行していくため、初期には自覚症状は全くありません。

そのため、最初のサインはやはり、心雑音です。その後、徐々に進行し、負担のかかった心房からは、以前お話した不整脈『心房細動』が発生します。これにより心臓の中で血栓が発生しやすくなり、脳梗塞のリスクが上がります。

そしてさらに進行すれば、『心不全』の初期症状である歩行時の息切れ、下肢の浮腫が出てきます。その後、徐々に心臓の機能も低下し始め、一度低下した心臓の機能は、手術で僧帽弁を修復しても戻りません。

そのため、その後も心不全の症状に悩まされることになります。したがって、心雑音に気づき、その経過を観察し、適切な時期に手術をすることが重要です。健康診断の心雑音を指摘されたら早めにご相談ください。