急性心筋梗塞 ~時間との勝負~

急性心筋梗塞発症してからカウントダウンが始まり、12時間でほぼ手遅れになってしまう病気。それが心筋梗塞です。

心筋梗塞は、心臓を栄養する血管、『冠動脈』が閉塞してしまう事によって、心臓に栄養や酸素が届けられなくなり、その結果、心臓の筋肉が壊死してしまう病気です。

たとえ閉塞した血管を再開通しても、壊死した筋肉はもとには戻らず、重度の後遺症を残します。冠動脈が閉塞したその瞬間から、刻一刻と心臓の筋肉は壊死していきます。

だから治療は早いほどいいのです。私達は、心筋梗塞の患者様が運ばれてくると、すぐに心臓カテーテル手術に取り掛かります。

それは1分1秒でも早いほうが、心臓の筋肉を壊死させずにすむからです。心筋梗塞の症状は、胸が重苦しい、締め付けられる、圧迫される、押しつぶされるという形で現れます。

前回、お話させていただいた狭心症と同じ症状であり、肩が痛い、胃が痛い、奥歯が痛い、など体の他の部位にも放散して現れることもあります。狭心症との違いは痛みが改善しないことです。

狭心症では冠動脈は狭くなっているだけであり、運動などで心臓に負担がかかったときだけ症状が出て、休めば治りますが、心筋梗塞は冠動脈が閉塞しているため、その痛みが改善せず何時間も持続します。

ところが高齢になるほど、心臓の痛みの神経は鈍くなり、病院に来るのが遅くなります。そのためせっかく閉塞した血管を直してあげても、もはや手遅れな方もいます。

本当は閉塞などする前の狭心症の段階で治療するのが一番良いのです。だからこそ、上記の様な胸の痛みを感じたら、例え数分間で自然に治っても、医師に相談して下さい。私達は心筋梗塞に至る前に救いたい、日々そう願って診療しております。

狭心症 〜その肩の痛み もしかしたら心臓病かもしれません〜

狭心症狭心症とは心臓に栄養を送る血管である冠動脈が動脈硬化によって狭くなってしまい、心臓に必要な栄養を送ることができなくなった状態です。

栄養が足りなくなった心臓は様々な悲鳴をあげます。典型的なのは『胸が痛い』です。胸が痛いと言っても『チクチク』や『ズキンズキン』ではありません。

『胸全体が締め付けられる、押し付けられる、圧迫される』ような感覚です。その悲鳴は、心臓が頑張るとき、つまり階段や坂道を昇ったり、冬の雪かきをしたときなど、心拍数が上がるときに起こります。

ですが休んでいれば心拍数は下がり、じきに治まります。そのため『痛みが治ったから受診しなかった』とおっしゃる方がたくさんおられます。こうして心臓の悲鳴は届かないのです。

また、胸の症状として現れてくれればまだ良いのですが、心臓の痛みを送る神経が他の臓器と繋がっているため、その悲鳴は時に『肩が痛い』、『顎や奥歯が痛い』、『胃が痛い』、『背中が痛い』などの症状として現れることがあります。

このような悲鳴は誤解され、整形外科、歯科、消化器内科を受診することになります。

以前は狭心症の検査は運動しなければできなかったり、入院して『心臓カテーテル』という細い管を、手や足の血管を通して心臓まで持っていかなければ診断ができなかったのですが、現在では心臓に特化した『冠動脈CT』にて、外来で比較的容易にCT検査で診断ができるようになりました。

死に至ることもある恐ろしい病『狭心症』。その悲鳴にいち早く気づき検査を受けてください。いつでも当院にご相談ください。