弁膜症① ~心臓の雑音~

弁膜症今回は高齢化とともに増えてきている『弁膜症』についてお話したいと思います。

以前お話させていただいたように、心臓は全身に血液を送り出すポンプであり、心臓が拍動することによって全身に血液が回り、また心臓へ戻ってくるのです。

そして、血液を前へと送り出すためには、心臓には送り出した血液が戻ってくるのを防ぐ蓋がついています。それを『弁』と呼んでいます。

血液を送り出す役割の心臓の左室には主に2つの弁がついており、それぞれ『僧帽弁』、『大動脈弁』と呼ばれています。

弁膜症とは、この弁が、①開きが悪くなって狭くなったり、②隙間ができて逆流したりする状態です。①狭くなる場合は『狭窄症』と呼ばれ、狭いところに無理やり血液を送るために、心臓に圧力がかかり、心肥大が起こります。

②逆流する場合は、『閉鎖不全症』と呼ばれ、送り出した血液が戻ってきて、心臓に容量の負担がかかるため、心拡大が起こります。

どちらも、心臓に負担がかかることに変わりはなく、何年もの間、心臓に負担がかかれば、最終的には心不全に至ります。弁膜症の最初のサインは、『心雑音』です。

健康診断で聴診器を当てれば、それだけで診断が付きます。現在では聴診器よりもさらに感度の高い、超音波検査があり、より早期に正確に診断が可能です。

心雑音に気づかずに病状が進行すれば、息切れ、足のむくみなどの心不全の症状が出てきます。その頃には弁膜症はかなり進行しています。

早めに対処するためにも、できれば心雑音のうちに気づきたいところです。次回、狭窄と逆流のそれぞれの弁膜症に関してお話させていただきたいと思います。

動悸②  ~心房細動に気づき、脳梗塞から身を守る~

動悸前回、動悸症状を起こす不整脈の種類に関して概説させていただき、その中でも高齢化とともに増加している不整脈『心房細動』を取り上げました。

心房細動は、心臓の中の心房という血液が入ってくる部屋で不整脈が起こり、心房が細かく震えた(細動といいます)状態となり、正常に収縮できなくなります。

ですが、全身の血液を送るのは心室であり、心室の収縮は保たれるため、大きな問題は起きません。ところが、心房内では血液の流れが悪くなるため、流れの淀んだ血液に血栓が発生します。

その血栓が流れて飛ぶと、脳の血管に詰まれば、脳梗塞となります。

心房細動の特徴は、脈拍がバラバラになることです。我々の脈は、規則正しいリズムで『トン、トン、トン・・』と打ちますが、心房細動になると『トン、ト、トトン、ト、トン、トトン・・』という具合に、全くバラバラなリズムで打つことになります。

そして、多くの場合、脈拍が90~140回/分程度まで早くなります。家庭の血圧計では、脈拍がバラバラなため、測定不能のエラーが出たり、測定のたびに脈拍数が90回/分だったり120回/分になったり安定しません。

そのため、もし、動悸を感じた場合、ご自身で手首の親指側を走る撓骨動脈を触れて脈拍を取れるのであれば、脈拍がバラバラであることを確認する。

もしくは家庭の血圧計で何度か血圧を測定し、その脈拍数が測定のたびに極端に違っていたり、エラーになったりする場合は、心房細動を疑い受診してください。

早期発見することができれば、将来、寝たきりになる脳梗塞を防ぐことができます。動悸が気になる方は、どうぞご相談ください。

動悸① ~高齢化社会とともに増え続ける不整脈 心房細動~

動悸心臓疾患の代表的な症状の一つに動悸があります。動悸といっても様々であり、心臓の病気(主に不整脈)による動悸もあれば、精神的なストレスから来る動悸もあります。

極端な話、運動したり、ホラー映画など恐怖を感じれば、誰でも動悸を感じます。

それらを区別し、様々な動悸の中から不整脈による動悸を見つけるには、その特徴を知る必要があります。

不整脈による動悸の特徴は、

  • 運動をしているわけでもないのに、突然、脈が早くなる。
  • 脈が早くなり、規則正しく打たずにバラバラである。
  • 脈飛び(トン、トン、トトン、、とう言う具合に脈が途切れる)を感じる。

これらが主に不整脈による動悸の特徴です。

それぞれ、①発作性上室性頻拍、②心房細動、③期外収縮、と言われる不整脈の特徴です。今回は、この中でも患者数が最も多く、増え続けている②心房細動に関して取り上げたいと思います。

心房細動は年齢とともに頻度が高くなり、京都市伏見区の調査では、70歳代で6.0%(男性7.1%,女性3.4%),80歳以上で7.6%(男性10.5%,女性6.4%)と高齢になるほどに増加していきます。

心房細動のみで命に関わることはありませんが、早くバラバラな脈になった心臓の中では、血流がよどんで停滞し、血の塊(血栓)ができ、それが脳へ流れて詰まることによる『脳梗塞』になる可能性が高まるのです。

心臓内では、できる血栓が大きいため、意識不明や最悪、死に至る大きい脳梗塞になる可能性があります。次回、心房細動に関してもう少しお話させていただこうと思います。

心不全Part② ~命の危険が迫る前に~

心不全前回、高血圧による心不全のお話をさせて頂きました。それでは心不全とは何なのか?今回はそのお話をさせて頂きたいと思います。

心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしています。心不全とはそのポンプの機能が低下した状態になります。

心臓のポンプは左心室、右心室の2つに分かれており、その機能も左心室は主に血液を送り出す機能、右心室は全身を回ってきた血液を受け取る機能の2つに分かれています。

そのため、心不全の際も、全身に必要な量の血液を送れなくなる左心不全症状、受け取り切れない血液が溜まってしまう右心不全症状の2つの異常が現れます。

左心不全症状としては、疲れやすい、手足の冷感、尿量の低下(腎臓機能低下)などが起こります。

右心不全症状としては、全身のむくみ、それによる短期間の体重増加、消化管のむくみによる食欲低下、肺がむくんで水が溜まり、夜間に横になった際に呼吸困難、咳が起こります。

これらの症状を知っていれば、ご自身で心不全の兆候を早期に気づくことができます。早期に気づいて対応すれば、外来にて治すことが可能になります。

ですが気づかずに過ごしてしまうと、夜間の呼吸困難が出てきたときには、命の危険が迫り、救急車で搬送される事態となります。上記のような症状を自覚された際はいつでもご相談ください。

心不全 ~自分の心臓をいたわるということ~

心不全心臓の機能は全身の臓器に血液を送り届けるポンプの役割であり、血液に乗せて酸素や栄養を運んでいます。

心臓のポンプが止まってしまえば、人間はたった5秒で意識を失い、約5分で脳が壊死し始めます。心不全とは、心臓が止まるわけではありませんが、『心臓』が『不全』の状態、つまりポンプ機能が低下し、全身に血液を送る力が落ちてしまう『状態』を指します。

ほとんどの心臓の病気は、『心不全』の原因となります。その代表的な心臓病の一つとして、前回お話した『心筋梗塞』があります。

ですが近年、平均寿命が延長し高齢化してきたために違った原因による心不全が増加してきております。それが高血圧性心不全です。

心臓は生まれてから一度も止まることなく働き続けるため、高齢になるほど心臓に負担が蓄積します。その負担をさらに増加する原因となるのが『高血圧』です。高血圧は痛くも痒くもありません。

ですが、血圧が高いということは、血液を送り出す血管内の圧力が高いということ、つまり心臓は高い圧力に打ち勝つ力で頑張って血液を送らなければなりません。

すると心臓に過度に負担がかかり心不全に至るのです。現代医療においてはまだ、簡単に心臓を取り替える治療はありません。

みなさんも健康に長生きするために、一つしかない自分の心臓をいたわることを考えてみませんか?私達、循環器内科の仕事は、心臓にかかる様々な負担を最小限にすることです。いつでもご相談ください。